『お客さんが御社の製品やサービスを買う理由は何でしょうか。』
この質問は簡単なようで、なかなか深い質問になっています。
クライアントの社内メンバー複数人にこの質問をすると様々な答えが返ってくることがあります。
便利で使いやすいから、価格が安いから、慣れているから、買いやすいから、ブランド感があるからなどさまざまな答えがあります。
しかし、このようにバラバラな回答になっている組織は、自社の価値を十分に戦略へ活かしきれていないことが多いと考えています。
どのお客さんにとって、どんな価値を提供しているのかをきちんと把握しなければターゲッティングした施策を打つことができないためです。また、答えがバラバラになっている場合、人によってお客さんへのメッセージが異なってしまうため、一気通貫の施策を打つこともできない状態と言えます。
■バリュープロポジションの組み立て方
一気通貫の戦略を作るためには、より具体的に『顧客の誰が』、『どんな価値』を感じているかを具体的にしていく必要があります。
例えば、顧客Aでは、○○を理由に買っていて、顧客Bでは△△を理由に買っているなど顧客ごとの理由を明確にしていきます。
その上で、顧客ごとの特徴に注目し、共通項からグルーピングし、それぞれグループ化された顧客で最も有力な購入理由をひとつ見つけ出していきます。
例えば、「とある顧客層Aでは、○○の理由によって当社商品を買っている」ということを見つけていく作業になります。もう少し具体的な例にすると例えば、『20代男性で未婚のセグメントでは、価格が安く、ネットで購入しやすいという理由で販売が伸びている』というような感じです。
この分析がSTP分析(セグメンテーション、ターゲッティング、ポジショニング)におけるセグメンテーションとターゲッティングになります。
さらに、その価値を他社が同様に提供できるものなのかどうかを確認し、他社にはできないことを自社の強みとして展開していくことがポジショニング戦略となっていきます。
少し説明が長くなりましたが、バリュープロポジションの定義をシンプルに書くと以下の一文に集約されます。
「特定の顧客が真に求め、競合他社にはない、当社が提供できる独自の価値」
以下の図のように自社だけが顧客のニーズに応えることができれば、その顧客に対して自社の優位性がある状況となります。

■バリュープロポジションは3C分析の延長
マーケティングで必ず出てくる3C分析ですが、バリュープロポジションにおいてこれらの3つのCが基本的な考察の土台となってきます。
顧客 Customer
他社 Competitor
自社 Company
STP分析を実施するためには、先ず、顧客と顧客のニーズを知り、セグメント化してターゲッティングを決め、他社を考慮しながら自社ができる戦略を打ち出していくという流れになります。重要なポイントは、自社や他社が起点になっているのではなく、顧客の「誰」が起点になっているということになります。
◾️ STP分析の具体例
理美容業界における1000円カットを例に挙げて見てみましょう。
従来、男性客は理容室で3000円以上を支払い、カットに加えて髭剃り、シャンプー、ブロー、セットといったサービスを受けるのが一般的でしたが、顧客の中には「手早く髪を切るだけで十分」「高品質にこだわらない代わりに、低価格を重視する」という明確なニーズを持つ顧客層が存在していました。
ここに1000円カットは目を付けたのです。例えば、勤務中の忙しいビジネスマンで電車移動の途中にカットしたいという顧客セグメントはそのひとつですね。
また、他社に目を向けると理美容室と競合するように見えますが、明確なポジショニングを取って差別化されています。
既存の理美容室が同様のサービスを提供できないのはワケがあります。
店内ではシャンプー代を設置し、パーマ、カラーなどにも対応できる従業員を雇っていることにより固定費を回収しないとならないコスト構造になっていますので、極端なローコストは難しく、客単価を上げる戦略を取らざるを得ません。
一方で、1000円カットはシャンプー設備を省くことで、設備投資と店舗面積を最小限に抑え、固定費を大幅に削減しています。
さらに、カットのみに特化することで、高度な技術を持つスタッフや特殊な材料も不要となり、人件費も最小限に抑えることができます。
明確な顧客セグメンテーションとターゲティングを行い、そのニーズに最適化されたコスト構造を実現して、従来の理美容室とは一線を画すポジショニングを確立しているのが1000円カットのビジネスモデルとなっています。
既存サービスとは異なる領域で独自の強みを徹底的に追求することで、特定の顧客セグメントと事業者の双方にとって明確な価値を創出することができるのがバリュープロポジションの考え方となります。
このようにバリュープロポジションは、他社や類似製品サービスとの差別化をするためのマーケティング手法となります。
またそれは、4P戦略(Product/Place/Promotion/Place)によって形成され、ターゲットされた顧客にとって最適な製品、価格、プロモーション、販売チャネルにすることによって自社の価値を正しく、また、最大化して対象となる顧客セグメントへ届けて行くことができます。
当社では、製品やサービスの差別化戦略、トレーニング、研修についてのご相談を無料でお受けしています。
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